
なぜ『お肉嫌い』になるのか?25年の栄養教諭経験から
こんにちは。福永です。
「うちの子、お肉を食べてくれないんです」 「野菜は食べるのに、なぜかお肉は残すんです」
25年間、学校で子どもたちの食育に携わってきた中で、このようなご相談を受けたことがありました。今日は、子どもたちの「お肉嫌い」について、現場で見えてきたことをお話しします。
こんなお悩み、ありませんか?
「お肉だけ残してしまう」
お悩み: 給食でも家庭でも、お肉の入った料理だけポツンと残っている。野菜は食べるのに、なぜお肉だけ?
特に低学年や幼稚園の園児に多く、ハンバーグや唐揚げのような人気メニューでも、なぜか手をつけない子がいました。
「固い、噛み切れないと言われる」
お悩み: 「お肉が固い」「噛み切れない」と言って、口から出してしまう。柔らかく調理しているつもりなのに…
実は、これには深い理由がありました。 子どもたちの噛む力や、お肉に対する慣れ方に、最近変化が起きているんです。
「においが嫌だと言う」
お悩み: 「お肉のにおいが嫌」と言って食べたがらない。大人には感じないにおいでも、子どもには敏感に感じるらしい。
子どもたちの感覚は、私たち大人より鋭敏です。 特に、お肉特有のにおいには敏感で、これが食べたくない理由の一つになることがあります。
学校現場で見えてきた変化
昔と今の子どもたちの違い
30年ほど前と比べて、子どもたちのお肉に対する反応が変わってきたことを感じています。
昔は「お肉大好き!」という子どもが多かったのですが、最近は「お肉はちょっと…」という子どもが増えている印象があります。これには、いくつかの理由があると思います。
食体験の変化
現代の子どもたちは、加工食品に慣れ親しんでいる一方で、「素材そのもの」の味に接する機会が減っているように感じます。
ハンバーガーやナゲットは食べられるけれど、ステーキや焼肉のような「お肉そのもの」の料理は苦手という子どもが増えています。
噛む力の変化
学校現場でよく感じるのが、子どもたちの噛む力の変化です。柔らかい食べ物に慣れているため、お肉のような噛み応えのある食材に戸惑う子どもが多くなっています。また歯の状態にも関係がある様です。
「お肉嫌い」の本当の理由
食感への不慣れ
子どもたちがお肉を嫌がる一番の理由は、実は「食感」だと感じています。
お肉は、野菜や米とは全く違う食感です。繊維質で噛み応えがあり、口の中での感覚も独特です。この食感に慣れていない子どもにとって、お肉は「難しい食べ物」なのです。
においに対する敏感さ
子どもたちの嗅覚は、大人よりもはるかに敏感です。私たち大人が気にならないお肉特有のにおいも、子どもには強く感じられることがあります。
特に、調理方法によってはにおいが強くなることもあり、これが「嫌い」の原因になることがあります。
見た目への抵抗
「これが動物のお肉」ということを理解し始める年頃の子どもにとって、お肉の見た目に抵抗を感じることもあります。
これは悪いことではありません。むしろ、「いのちをいただいている」ということを理解している証拠とも言えます。
家庭でできる工夫
調理方法を工夫してみる
細かく刻んで混ぜ込む 最初は、ハンバーグやミートソースのように、お肉を細かく刻んで他の食材と混ぜ合わせる料理から始めてみてください。
十分に加熱して柔らかく 子どもたちにとって、固いお肉は食べにくいものです。時間をかけてじっくりと調理し、箸で簡単に切れるくらい柔らかくしてあげてください。
下味をしっかりと お肉特有のにおいが気になる場合は、下味の工夫が有効です。しょうがやにんにく、お酒などを使って、においを和らげてあげてください。
一緒に調理してみる
子どもと一緒にお肉を調理してみることも効果的です。自分で作ったものは、不思議と食べてくれることが多いものです。
ハンバーグをこねたり、お肉に下味をつけたり、簡単なお手伝いから始めてみてください。
「いのちをいただく」ことを伝える
学校でいつも子どもたちに話していたのは、「いのちをいただいている」ということの大切さです。
年齢や子どもにもよりますが、お肉になってくれた動物への感謝の気持ちを持つことで、食べることの意味を理解してくれました。
無理をしないことの大切さ
食べられなくても大丈夫
「お肉を食べてくれない」と心配されるお母さんも多いのですが、無理に食べさせる必要はありません。
他の食材からもタンパク質は摂取できますし、成長とともに食べられるようになる子どもがほとんどです。
少しずつ、ゆっくりと
大切なのは、少しずつ慣れていくことです。今日一口、明日は二口というように、無理のないペースで進めてください。
子どもには子どものペースがあります。焦らず、ゆっくりと見守ってあげることが一番大切です。
良質なお肉を選ぶ意味
子どもにこそ、美味しいお肉を
子どもがお肉嫌いになる理由の一つに、「美味しくないお肉を食べた経験」があることも多いんです。
固すぎたり、においが強すぎたりするお肉では、子どもが「お肉は美味しくない」と思ってしまうのも無理はありません。
最初の印象が大切
子どもにとって「最初に食べたお肉の味」は、その後のお肉に対する印象を大きく左右します。
だからこそ、子どもにお肉を食べさせる時は、できるだけ美味しくて安全なものを選んであげたいと思います。
家族で一緒に「美味しい」を共有
本当に美味しいお肉を食べた時の子どもたちの表情は、本当に輝いています。「美味しい!」という感動を家族で共有することで、お肉への印象も変わってきます。
お店での経験から
自店で働いていた時、家族連れのお客様もたくさんいらっしゃいました。
「普段はお肉を食べない子が、ここでは食べてくれるんです」 「家では『お肉嫌い』なのに、こんなに食べるなんて」
そんなお声をよく聞きました。やはり、お肉の質や調理方法で、子どもの反応は大きく変わるものです。
焦らず、楽しく、食育を
子どもの「お肉嫌い」は、多くの場合、一時的なものです。成長とともに味覚も変化し、食べられるようになる子がほとんどです。
大切なのは、お肉を「特別で美味しいもの」として認識してもらうこと。そして、食事の時間を家族で楽しく過ごすことです。
私自身、学校現場で多くの子どもたちを見てきましたが、食事を楽しんでいる子どもは、自然と好き嫌いも少なくなっていく傾向がありました。
まとめ:食事は愛情のコミュニケーション
子どもの「お肉嫌い」に悩まれているお母さん、お父さん。まずは焦らないでください。
子どもたちは、私たちが思っている以上に敏感で、そして素直です。美味しいものは美味しいと感じ、愛情を込めて作られた料理はちゃんと分かってくれます。
良質なお肉を選んで、家族みんなで「美味しいね」と言いながら食事をする。そんな時間こそが、子どもたちにとって一番の食育なのかもしれません。
食事は、栄養を摂るためだけのものではありません。家族のコミュニケーションの時間であり、愛情を伝える大切な機会です。
子どもたちが、食事の時間を通じて、食べることの喜びと感謝の気持ちを学んでくれることを願っています。
管理栄養士・1級フードアナリスト・元学校栄養教諭
福永


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