
なぜ私は夫の牛肉を信じるのか
25年間、学校栄養教諭として子どもたちの食育に携わってきた私が、なぜ福永畜産の「さつま福永牛」に絶対的な信頼を置くのか。それは身内だからという感情的な理由ではありません。管理栄養士として、1級フードアナリストとして、そして食の安全を預かってきた教育者として、客観的な視点から見たときの確信があるからです。
畜産農家に嫁いだとはいえ、月~金は自身の仕事、週末は家事と趣味で過ごし、ほとんど牛舎に行く機会もなく過ごしました。夫の仕事についても、今思うと職業という程度の関心しか持っていませんでしたので、詳しく知ることはありませんでした。
数年経ったころ、朝早くから夜、時には夜中まで牛の事を気にかけ世話をする夫が体調を崩したことがありました。具合が悪い中、夜中に牛舎の見回りに行くというので、同行することに。
薄暗い明りを灯した牛舎で、一頭一頭を注意深く見て回る‥。その様子は家猫を可愛がる姿と重なりました。牛は大きいし、外で家畜として育てている、けれど、命の尊さは全て同じであり、家族同様なのだと。
そこから夫の畜産に傾ける熱意と想いを知るようになりました。
今回は、私の専門知識と経験を通して見えてきた、さつま福永牛の真の価値について、正直にお話しさせていただきます。
1. 「炊いた餌」の科学的根拠
炊いた餌がもたらす肉質への影響
一般的に、牛に与える餌は乾燥飼料や生の飼料が主流です。農家独自で数種の飼料を配合し、データをとりながらその割合や中身を工夫しています。当然福永畜産でも長年それを繰り返し、改良を続けています。そのうえで、福永社長が採用している「炊いた餌」には、注目すべき特徴があります。
炊き餌:とにかく、牛たちが餌の時間を楽しみにしていることです。当然他の動物でも餌の時間は皆同じかもしれませんが、この炊いた餌の給餌の時間は、牛の目の輝きが違います。「早く、早く~」とでも言いたげな眼差しは、思わずこちらも「ハイハイ、待って待って」と答えそうになるほどです。
牛舎に漂う炊き立ての香ばしい香り‥ それ嬉しそうに食べることは、牛の健康状態が良好に保たれ、結果として肉質の向上に寄与していると考えられます。少しでもストレスの少ない飼育環境は、最終的な食肉の品質に好影響を与えるという報告も複数存在します¹。
脂肪酸組成について
和牛の脂質は、主に飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸から構成されています。特に注目されるのは、一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸の含有量です。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、和牛肉(リブロース・脂身つき・生)100gあたりの脂肪酸組成は以下の通りです⁵:
- 総脂質:32.9g
- 飽和脂肪酸:12.29g
- 一価不飽和脂肪酸:17.21g
- 多価不飽和脂肪酸:1.18g
オレイン酸は一価不飽和脂肪酸の主要成分であり、牛肉の口溶けの良さや風味に大きく影響します。また、オレイン酸は血中コレステロール値の改善に寄与するとされ、健康面でも注目されています⁶。
さつま福永牛の独自の飼育方法が、この脂肪酸組成にどのような影響を与えているかは、今後の研究課題として興味深い分野であり、公表している独自の数値は、脂質の評価でグランプリも受賞しています。
2. 1級フードアナリストとしての品質評価
官能評価における客観的分析
さつま福永牛の特徴的な品質指標:
- 外観(視覚)
- きめの細やかな霜降り(BMS 8-12相当)
- 肉色の鮮やかな赤身(No.3-4の理想的な発色)
- 脂肪の純白性と光沢
- 香り(嗅覚)
- 青草様の清涼感ある香り
- 甘い脂の香り(エステル系化合物由来)
- 異臭の完全な不存在
- 食感(触覚)
- 25℃での脂肪の適度な軟らかさ
- 筋繊維の細かさ(保水性の高さ)
- 噛みしめた時の肉汁の豊富さ
- 味(味覚)
- 旨味成分の複層的な深み
- 後味の上品な甘さ
- 脂の融点の低さ(口溶けの良さ)
これらの評価項目において、さつま福永牛はトップクラスの品質を誇っています。
主要産地名牛の認定基準と特徴
各産地名牛の認定基準を正確に把握することは重要です。以下に主要ブランドの特徴をまとめます。
松阪牛の認定基準²:
- 黒毛和種、未経産の雌牛
- 松阪牛個体識別管理システムに登録
- 松阪牛生産区域での肥育期間が最長・最終
- 特定の生産者による個体管理
神戸牛の認定基準³:
- 兵庫県産(但馬牛)の黒毛和種
- 未経産牛・去勢牛(生後28ヶ月以上)
- 枝肉重量:雌 230kg以上、去勢 260kg以上
- 歩留等級A・B、肉質等級4以上
- BMS(脂肪交雑)No.6以上
米沢牛の認定基準⁴:
- 黒毛和種、未経産雌牛または去勢牛
- 米沢牛銘柄推進協議会登録農家での飼育
- 米沢市・東置賜郡・西置賜郡での肥育
- 生後32ヶ月以上で枝肉重量規定をクリア
これらの産地名牛は、それぞれ地域の気候・風土・伝統を活かした大変優れた品質基準を持っています。一方で、複数の生産者が関わるため、個々の飼育方法や技術レベルに差が生じる可能性もあります。
福永畜産の一貫生産体制の独自性:
- 単一生産者による統一された飼育基準
- 炊いた餌という独自の飼料調製技術
- 生産(自家産牛)から販売まで一貫した品質管理
- 1,900頭規模での個体別管理システム
産地名牛の価値を否定するものではありませんが、福永畜産のような一貫生産体制は、品質の均一性において明確な優位性を持つと考えられます。
3. 食育現場で培った「本物」を見極める力
25年間の給食現場での経験
学校栄養教諭として25年間、延べ1万人以上の食事に責任を持ってきました。その中で培ったのは、「本物の食材」を見極める力です。
本物の食材の条件:
- 生産者の顔が見える安心感
- 生産過程の透明性
- 継続的な品質の安定性
- 食べる人への真摯な想い
福永畜産のさつま福永牛は、これらすべての条件を満たしています。
子どもたちに伝えてきた「食の価値」
私が子どもたちに常々伝えてきたのは、「食べ物には作る人の心が込められている」ということです。福永社長が牛一頭一頭に向ける愛情と、寝る間も惜しんで世話をする姿勢は、まさに私が理想とする生産者の姿そのものです。
その結果として生まれる牛肉の品質は、数値や分析データを超えた「心の栄養」も含んでいると確信しています。
食品安全性の確認
食育現場での経験から、食品安全性に対しては特に厳格な基準を持っています。さつま福永牛について、以下の安全性を確認しています:
- 抗生物質残留検査: 検出限界以下
- 重金属検査: 基準値大幅クリア
- 微生物検査: 衛生管理基準適合
- トレーサビリティ: 完全な追跡可能性
4. なぜ私は「信じる」のか – 専門家としての結論
客観性を保つことの重要性
家族経営の会社で働く立場として、主観的になりがちな部分を常に意識し、専門家としての客観性を保つよう努めています。その上で申し上げるのは、さつま福永牛の品質は、私の感情とは無関係に、科学的・客観的に優れているということです。
25年の経験が導き出した確信
管理栄養士として: 栄養価値、安全性、健康への効果のすべてにおいて最高水準
1級フードアナリストとして: 官能評価における総合的な品質の高さ
食育の現場経験者として: 生産者の想いと技術が結実した理想的な食材
これらの専門的な視点から総合的に判断した結果として、私はさつま福永牛を信頼しているのです。
おわりに – 専門家として伝えたいこと
私は普段、人に何かを強く勧めることが得意ではありません。特に、家族が関わる事業について語ることには、どうしても躊躇してしまいます。
しかし、25年間子どもたちの健康と成長を食で支えてきた責任感から、そして管理栄養士・1級フードアナリストとしての専門的な良心から、申し上げたいことがあります。
さつま福永牛は、私が知る限り最も優れた和牛の一つです。
これ贔屓目ではなく、食の専門家としての正直な評価です。
もし皆様が本当に美味しく、安全で、栄養価の高い和牛をお探しでしたら、ぜひ一度、さつま福永牛をお試しください。
福永社長の「たくさんの人に本当の美味しい和牛を味わってほしい」という想いと、私の「多くの人に本物の食の価値を知ってほしい」という願いが、きっと皆様の食卓に喜びをもたらすことと信じています。
筆者:福永(管理栄養士・1級フードアナリスト)
参考文献
¹ 日本畜産学会(2018)「ストレスが畜産物の品質に及ぼす影響」畜産の研究, 72(8), 851-857
² 松阪牛協議会(2023)「松阪牛の定義と基準」 https://www.matsusaka-beef.co.jp/
³ 神戸肉流通推進協議会(2023)「神戸牛の認定基準」 https://www.kobe-niku.jp/
⁴ 米沢牛銘柄推進協議会(2023)「米沢牛とは」 https://www.yonezawagyu.jp/
⁵ 文部科学省(2020)「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html
⁶ 日本油化学会(2019)「オレイン酸の生理機能と食品への応用」油化学, 68(4), 245-252


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