【創業物語】鹿児島天文館に焼肉店誕生

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牧場主が描いた「究極の一貫経営」という夢

「なぜ、牛を育てる私たちが直接お客様に提供しないのか?」

この素朴な疑問から、すべては始まりました。

さつま町で1956年から続く畜産業を営む福永家。3代目となる福永充氏が抱いていたのは、生産者と消費者の距離を縮めたいという強い想いでした。どんなに良い牛を育てても、その価値が最終的にお客様に正しく伝わらない現実に、長年もどかしさを感じていました。

「うちの牛は本当に美味しいと思うけど、なかなかその良さが伝わらない。それなら自分たちで直接提供すればいいじゃないか」

単純に聞こえるかもしれませんが、畜産業から飲食業への参入は、まさに異業種への大きな挑戦でした。

なぜ天文館だったのか

立地選びには、福永氏なりの確固たる理由がありました。

「鹿児島で一番多くの人が集まる場所で、さつま福永牛の本当の味を知ってもらいたかった」

天文館は江戸時代から続く鹿児島の文化的中心地。地元の人はもちろん、県外から訪れる観光客やビジネスマンも多く行き交う特別な場所です。ここでなら、より多くの人にさつま福永牛の魅力を伝えられる。そんな確信がありました。

東千石町12-13の物件と出会ったのは、開業の半年前。村山ビルの1階、42席という程よい規模の空間が、福永氏のイメージと完璧にマッチしました。

「大きすぎず、小さすぎず。お客様一人ひとりとの距離を大切にできる、ちょうど良いサイズだった」

「熟成」というこだわりの誕生

ギュウドウの最大の特徴である「50日間熟成」は、実は試行錯誤の末に生まれた技術でした。

開業準備期間中、福永氏は何度も何度も熟成期間を変えて味の変化を確かめました。30日、40日、45日、50日、そして60日。食べ比べを重ねた結果、50日という期間が最も旨味と柔らかさのバランスが良いと確信したのです。

「最初は正直、本当に美味しくなるのか半信半疑でした。でも、50日熟成させた肉を初めて食べた時の感動は今でも忘れられません。『これだ!』と確信しました」

この熟成技術こそが、後にギュウドウを他の焼肉店と一線を画す存在にする、最大の武器となったのです。

開業当日の緊張と感動

2012年7月10日、いよいよオープンの日を迎えました。

朝から準備に追われるスタッフたち。福永氏も、普段は牧場で作業着姿の彼が、この日ばかりはスーツ姿で店に立ちました。

「お客様に喜んでもらえるだろうか」 「熟成肉の味を理解してもらえるだろうか」 「値段に見合う価値を提供できるだろうか」

不安と期待が入り混じる中、午後5時30分。ついにギュウドウの扉が開かれました。

最初のお客様は、天文館で長年商売をされている地元の方々でした。恐る恐る提供したさつま福永牛を一口食べた瞬間の、その方の表情の変化。

「うまい!へ~、これは今まで食べたことがない味だ」

その一言が、福永氏の胸に深く刻まれました。長年の夢が、ついに現実となった瞬間でした。

最初の試練「理解されない価格」

しかし、順風満帆とはいかないのが現実です。

開業当初、ギュウドウが直面した最大の課題は「価格に対する理解」でした。一般的な焼肉店と比べて高めの価格設定に、戸惑う声も少なくありませんでした。

「普通の焼肉と何が違うの?」「少し高くない?」

そんな疑問の声に対し、福永氏とスタッフは一つひとつ丁寧に説明を続けました。50日間の熟成工程、A5ランクの品質、一頭買いによる希少部位の提供、そして、何より熟成する過程で重量が減少すること、熟成した肉の表面をそぎ落として成形しなければならないことによる廃棄分があること。

「価格だけを見れば少し高いかもしれません。でも、この味を一度体験していただければ、必ずご納得いただけるはずです」

福永氏の信念は揺らぐことがありませんでした。

転機となった「口コミの力」

転機は開業から3か月後にやってきました。

ある常連のお客様が、県外から来たお友達をギュウドウに連れて来られた時のことです。そのお友達が感動のあまり、SNSで詳細な感想を投稿。それが拡散され、県外からも問い合わせがくるようになったのです。

「鹿児島でこんな素晴らしい焼肉を食べられるなんて!」 「熟成肉の概念が変わりました」 「また必ず来ます」

一人ひとりのお客様の心に残る体験を提供することで、ギュウドウは着実にファンを増やしていきました。

13年後の今、振り返る創業の意義

2025年の今、ギュウドウは鹿児島を代表する焼肉店の一つとなりました。本店に加え、「牛道 はなれ」も高評価を頂いています。

しかし、福永氏の想いは創業当時から変わりません。

「お客様に本当に美味しい牛肉を提供したい。その一心で始めたことが、こんなに多くの方に支持していただけるなんて、13年前の開業当時は想像もできませんでした」

創業から13年。ギュウドウの挑戦は今も続いています。

受け継がれる創業の精神

現在店長を務める前迫純寿氏は、創業3年目から店に立ち続けています。

「福永さんの『お客様に最高の牛肉を』という想いを、私たちスタッフ全員が受け継いでいます。値段ではなく、価値で勝負する。それがギュウドウのスタイルです」

前迫店長の言葉数は多くありませんが、その一言一言には創業者の精神が宿っています。

今日もギュウドウで生まれる新しい物語

2012年7月10日に始まったギュウドウの物語は、今日も天文館で続いています。

初めて来店されるお客様の驚きの表情。 何度も通ってくださる常連様との温かい会話。 大切な記念日を彩るお手伝い。 出張で鹿児島を訪れるビジネスマンの「また来ます」という言葉。

一つひとつの出会いが、ギュウドウの新しいページを刻んでいます。

「牧場から食卓まで」の一貫したこだわりと、お客様への真摯な想い。それが2012年から変わらないギュウドウの原点です。


次回は「牧場直営の挑戦」をテーマに、なぜ福永畜産が飲食業に参入することになったのか、その背景にある深い想いをお伝えします。どうぞお楽しみに。


熟成焼肉 Gyudo! 本店
〒892-0842 鹿児島県鹿児島市東千石町12-13 村山ビル1階
TEL: 099-223-2044
営業時間: ランチ 11:30-14:00(土日14:30) / ディナー 17:30-23:00(金土祝前日は24:00迄)
天文館通駅より徒歩2分

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この記事を書いた人
福永

福永(株式会社牛道役員) 1級フードアナリスト・管理栄養士・日本箸教育講師・25年間の学校栄養教諭経験を経て、食品安全管理の知識と、現在の食肉業界での実務経験を活かし、消費者の皆様に安心・安全な食品選択のための情報を提供している。

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