天文館で12年、変わらない「美味しか肉への情熱」

鹿児島市天文館の東千石町。アーケードを抜けた先に佇む「熟成焼肉 Gyudo! 本店」。この店で12年間、変わらぬ情熱を持って熟成肉と向き合い続ける男がいる。店長の前迫、48歳。
大手精肉会社から天文館へ
「最初は正直、不安でしたね」
前迫店長は振り返る。2012年、Gyudo!がオープンしてしばらく経った頃、大手精肉会社から転職してきた彼は、それまでとは全く異なる「熟成肉」という世界に足を踏み入れることになった。
福永畜産直営という看板を背負い、自社ブランド「さつま福永牛」を50日間かけて熟成させる――。当時はまだ珍しかった熟成肉の技術に、前迫店長は魅了された。
「肉の色が変わっていく様子が、最初は心配になるほどだったのですが、それが美味しさの証拠だと分かってからは、楽しみになったんです」
言葉数は少なくても、肉への愛は深く
鹿児島出身の前迫店長は、もともと言葉数が多い方ではない。しかし、肉のことになると、その目は輝く。
「A5ランクの黒毛和牛を50日間熟成させると、旨味成分が凝縮されて、本当に別次元の味になるんです。岩塩とわさびだけで食べてもらいたい。余計な味付けは必要ありません」
福永畜産直営だからこそできる「一頭買い」。希少部位から定番部位まで、牛一頭を余すことなく活用する技術も、前迫店長が磨き上げてきたものだ。
愛犬のフレンチブルドッグが教えてくれたこと
プライベートでは、愛犬と過ごす時間が何よりの癒し。実は、このワンちゃんから学んだことが、接客にも活かされているという。
「福ちゃんは人懐こくて、誰に対してもフレンドリーなんです。でも決して騒がしくない。そんな福ちゃんを見ていて、お客様への接し方も自然に身についたような気がします」
確かに前迫店長の接客は、温かみがありながらも押し付けがましくない。お客様のペースを大切にしながら、必要な時には的確なアドバイスを提供する。その絶妙なバランスが、多くの常連客様に愛される理由の一つだろう。
ラーメンとサッカー、そして肉
仕事を離れると、前迫店長はラーメン好きとサッカー好きの顔を見せる。
「実は、美味しいラーメンのスープと熟成肉って、共通点があるんです。どちらも時間をかけて旨味を引き出している。鹿児島のラーメンは豚骨ベースが多いんですが、あの深いコクと熟成肉の旨味には通じるものを感じます」
サッカー観戦の後は、店に立ち寄り、カウンター席でゆっくりと肉を味わうのが楽しみだという。
「お客様と同じ目線で肉を味わうことで、新しい発見があるんです。『ここの焼き加減をもう少し調整した方がいいな』とか『この部位にはこの塩加減が合うな』とか」
天文館という舞台で
天文館は鹿児島の食文化の中心地。おはら祭りや六月灯ゆかた祭りなど、一年を通して多くのイベントが開催される。
「天文館にお店があることを誇りに思っています。山形屋さんやマルヤガーデンズさんでお買い物を楽しまれたお客様が、その後にうちで美味しい肉を味わってくれる。そんな天文館の一日の流れの中に、Gyudo!があることが嬉しいんです」
変わらない想い、進化する技術
12年という歳月は、前迫店長にとって学びの連続だった。熟成技術は日々進歩し、お客様の好みも変化する。しかし、変わらないものがある。
「美味しい肉をお客様に提供したい。ただそれだけです。シンプルですが、それが一番大切なこと。福永畜産直営だからこそ提供できる品質があります。これからも、その期待に応え続けていきたいですね」
42席の店内を見渡しながら、前迫店長は静かに語る。言葉は多くないが、その想いは確実にお客様に伝わっている。それが証拠に、開店当初から通い続ける常連客も多い。
これからの10年へ
「これからも、変わらずに美味しい肉を提供していきます。技術は進歩させながら、でも基本の想いは変えずに」
前迫店長の13年間の歩みは、決して派手ではない。しかし、確実に天文館の食文化に根を張り、多くの人に愛される店を築き上げてきた。
福永畜産直営の看板を背負い、さつま福永牛の魅力を伝え続ける前迫店長。その情熱は、これからも天文館の夜を温かく照らし続けます。
熟成焼肉Gyudo!本店 住所:鹿児島県鹿児島市東千石町12-13 村山ビル1階 営業時間:ランチ 平日11:30-14:30、土日祝11:30-15:00 / ディナー 17:30-23:00(金土祝前日は24:00まで) 定休日:無休


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