
和牛初心者におすすめ:最初に選ぶべき部位とその理由
はじめに
「和牛を買ってみたいけれど、どの部位を選んだらいいか分からない…」 「サーロン?ロース?違いがよく分からない」 「高いお肉で失敗したくない」
そんな声をよく耳にします。
1級フードアナリストとして、また25年間食育に携わってきた経験から、和牛初心者の方に本当におすすめできる部位と、その選び方のポイントをお伝えします。経験者の方にも、改めて部位の特徴を整理していただける内容になっています。
和牛の部位を理解する基礎知識
牛の身体の構造と部位の関係
牛肉の部位は、牛の身体のどの部分かによって特徴が大きく異なります。基本的な法則をご紹介しましょう。
運動量と肉質の関係
- よく動く部位:筋肉が発達し、歯ごたえがある(モモ、スネなど)
 - あまり動かない部位:柔らかく、脂肪が入りやすい(ロース、ヒレなど)
 
脂肪の入り方
- 霜降り:筋肉の間に脂肪が網目状に入った状態
 - サシ:霜降りの程度を表す表現
 - 赤身:脂肪が少なく、肉本来の味が強い部位
 
部位の大分類
牛肉は大きく以下の部位に分類されます:
前身部位
- 肩、肩ロース、リブロース
 
中央部位
- サーロイン、ヒレ
 
後身部位
- モモ、ウチモモ、ランプ
 
その他
- バラ、スネ、タン
 
初心者に最もおすすめの部位 TOP3
1位:肩ロース(推奨度:★★★★★)

初心者におすすめする理由
味のバランスが絶妙 肩ロースは、適度な霜降りと赤身のバランスが取れた部位です。和牛らしい甘い脂の旨味を感じながらも、肉本来の味もしっかり楽しめます。
調理方法の幅広さ
- すき焼き:薄切りで旨味が存分に
 - 焼肉:厚切りでジューシーに
 - ステーキ:2cm厚でも美味しく
 - 煮込み:ブロックで深い味わいに
 
コストパフォーマンス 高級部位に比べて価格が手頃でありながら、和牛の美味しさを十分に味わえます。
失敗しにくい 多少火を通しすぎても硬くなりにくく、調理初心者にも扱いやすい部位です。
2位:リブロース(推奨度:★★★★☆)
贅沢感を味わいたい方に
霜降りの美しさ リブロースは霜降りが美しく入った、見た目も華やかな部位。特別な日の料理にぴったりです。
ステーキに最適 厚切りステーキにすると、外はカリッと、中はとろけるような食感を楽しめます。
おすすめの厚さ:2.5-3cm この厚さで焼くことで、リブロースの良さが最大限に引き出されます。
注意点 脂が多めなので、高齢者や脂が苦手な方は少量から始めることをおすすめします。
3位:モモ(赤身)(推奨度:★★★★☆)
健康志向の方におすすめ
赤身の旨味 脂肪が少なく、牛肉本来の味を楽しめます。タンパク質含有量が高く、カロリーも控えめです。
様々な調理法に対応
- ローストビーフ:低温調理で柔らかく
 - たたき:表面だけ焼いて
 - 薄切り:しゃぶしゃぶや冷しゃぶに
 
アスリートや健康志向の方に人気 高タンパク、低脂肪で栄養価が高く、体作りを意識する方に選ばれています。
調理法別おすすめ部位ガイド
すき焼きを楽しみたい場合
第1候補:肩ロース(薄切り)
- 甘辛いタレとの相性抜群
 - 適度な脂で旨味がしっかり
 - 価格も手頃で家族分も安心
 
第2候補:リブロース(薄切り)
- より贅沢な味わい
 - 特別な日のすき焼きに
 
ステーキを楽しみたい場合
第1候補:サーロイン

- ステーキの王道
 - 柔らかさと旨味のバランス
 - 初心者でも焼きやすい
 
第2候補:ヒレ

- 最も柔らかい部位
 - 上品で繊細な味わい
 - 高級感を味わいたい時に
 
焼肉を楽しみたい場合
第1候補:カルビ(バラ肉)

- 焼肉の定番
 - 脂の甘みと香ばしさ
 - 子どもから大人まで人気
 
第2候補:ロース(肩ロース)
- バランスの良い味わい
 - 厚切りでも薄切りでも美味
 
部位選びの失敗を避けるコツ
1級フードアナリストが教える選択基準
家族構成を考慮する
- 小さなお子様がいる家庭:脂少なめの部位(モモ、肩)
 - 高齢者がいる家庭:柔らかい部位(ヒレ、肩ロース)
 - 男性中心の家庭:しっかりした食べ応え(リブロース、サーロイン)
 
調理経験を考慮する
- 料理初心者:失敗しにくい部位(肩ロース、モモ)
 - 調理に慣れている:技術が活かせる部位(ヒレ、サーロイン)
 
予算を考慮する
- お試し購入:手頃な価格の部位(肩、モモ)
 - 特別な日:贅沢な部位(ヒレ、サーロイン)
 - 日常使い:コスパ重視(肩ロース、バラ)
 
よくある失敗パターンと対策
失敗例1:「高級部位を買ったのに硬くなった」
- 原因:火を通しすぎ
 - 対策:温度計を使用、レア〜ミディアムで
 - 部位:ヒレ、サーロインは特に注意
 
失敗例2:「脂が多すぎて食べきれなかった」
- 原因:霜降り度の把握不足
 - 対策:初回は脂少なめの部位を選択
 - 部位:モモ、肩から始める
 
失敗例3:「思っていた料理に向いていなかった」
- 原因:部位と調理法のミスマッチ
 - 対策:調理法を決めてから部位選択
 - 参考:上記の調理法別ガイドを活用
 
予算別おすすめプラン
お試しプラン(5,000円以内)
おすすめ構成
- 肩ロース薄切り 200g:すき焼き用
 - モモブロック 200g:ステーキ・ローストビーフ用
 - 合計予算:約4,500円
 
このプランの狙い 異なるタイプの部位を少量ずつ試して、好みを見つけることができます。
満足プラン(8,000円以内)
おすすめ構成
- リブロースステーキ 300g:メイン料理用
 - 肩ロース薄切り 300g:すき焼き・焼肉用
 - 合計予算:約7,500円
 
このプランの狙い 和牛の贅沢感を味わいながら、実用的な部位も確保。
贅沢プラン(15,000円以内)
おすすめ構成
- サーロインステーキ 400g:特別な日用
 - ヒレステーキ 200g:最高級体験用
 - 肩ロース 400g:日常使い用
 - 合計予算:約14,000円
 
このプランの狙い 和牛の魅力を余すところなく体験できる贅沢セット。
部位別詳細ガイド
プレミアム部位の特徴
サーロイン
- 位置:腰の部分
 - 特徴:柔らかく、適度な霜降り
 - 最適調理:ステーキ
 - 価格帯:高級
 - 初心者度:★★★☆☆
 
ヒレ
- 位置:背骨の下側
 - 特徴:最も柔らかい、上品な味
 - 最適調理:ステーキ、ローストビーフ
 - 価格帯:最高級
 - 初心者度:★★☆☆☆
 
バランス部位の特徴
リブロース

- 位置:背中の肋骨部分
 - 特徴:美しい霜降り、ジューシー
 - 最適調理:ステーキ、すき焼き
 - 価格帯:高級
 - 初心者度:★★★★☆
 
肩ロース
- 位置:肩から背中
 - 特徴:バランス良好、万能
 - 最適調理:すき焼き、焼肉、ステーキ
 - 価格帯:中級
 - 初心者度:★★★★★
 
実用部位の特徴
モモ
- 位置:後脚
 - 特徴:赤身、高タンパク
 - 最適調理:ローストビーフ、しゃぶしゃぶ
 - 価格帯:中級
 - 初心者度:★★★★☆
 
バラ(カルビ)
- 位置:胸〜腹部
 - 特徴:脂身豊富、濃厚
 - 最適調理:焼肉、煮込み
 - 価格帯:中級
 - 初心者度:★★★★☆
 
購入時のチェックポイント
見た目で判断するコツ
色艶の確認
- 良い状態:鮮やかな赤色、ツヤがある
 - 避けるべき:黒ずんでいる、乾燥している
 
霜降りの状態
- 注意:大きな脂の塊が多い
 - 理想的:細かく均等に入っている
 
ドリップの確認
- 良い状態:ドリップが少ない
 - 避けるべき:血の塊やドリップが多い
 
表示情報の読み方
格付け表示
- A5、A4:歩留まりと品質の等級
 - BMS:霜降り度の指標(1-12)
 - 産地:生産地域の表示
 
個体識別番号
- 10桁の番号で個体を特定
 - トレーサビリティの確保
 
保存と解凍のベストプラクティス
購入後すぐに調理しない場合
冷蔵保存(2-3日以内)
- 温度:0-4℃
 - 包装:購入時のパックのまま
 - 位置:冷蔵庫の最下段
 
冷凍保存(1-3ヶ月)
- 温度:-18℃以下
 - 包装:空気を抜いて密閉
 - ラベル:購入日と部位を記載
 
解凍のベストプラクティス
前日解凍(推奨)
- 冷蔵庫で24時間かけてゆっくり解凍
 - 旨味成分の流出を最小限に
 
当日解凍(急ぎの場合)
- 氷水で1-2時間
 - 密閉袋のまま行う
 
調理のコツ:部位別アドバイス
ステーキ用部位の調理法
基本の焼き方
- 常温に戻す(30分-1時間)
 - 強火で表面を焼く
 - 中火で内部を温める
 - 休ませる(5分程度)
 
温度の目安
- レア:50-52℃
 - ミディアムレア:52-55℃
 - ミディアム:55-60℃
 
すき焼き用部位の調理法
薄切り肉の扱い
- 火を通しすぎない
 - さっと湯通し程度
 - 余熱も考慮する
 
よくある質問 Q&A
Q1. 和牛と国産牛の違いは?
A. 和牛は品種、国産牛は産地の話です
和牛:黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種の4品種 国産牛:日本国内で飼育された牛(品種は問わない)
和牛の方が一般的に霜降りが多く、高価格帯になります。
Q2. A5ランクって本当に美味しいの?
A. 美味しさの指標の一つですが、絶対ではありません
A5は「歩留まり等級A」×「肉質等級5」の組み合わせ。霜降り度が高いことを示しますが、個人の好みによってはA3やA4の方が好まれる場合もあります。
Q3. 初回購入の適量は?
A. 2-4人家族なら300-500gがおすすめ
目安
- 1人前:100-150g(ステーキの場合)
 - 1人前:80-100g(すき焼きの場合)
 
初回は少なめに購入して、好みを確認することをおすすめします。
まとめ
和牛の部位選びは、最初は難しく感じるかもしれませんが、基本的な特徴を理解すれば決して難しくありません。
初心者の方への最終アドバイス
- 最初は肩ロースから:バランスが良く失敗しにくい
 - 少量ずつ試す:好みを見つけるまでは小分けで
 - 調理法を決めてから選ぶ:目的に合った部位選択
 - 無理をしない:予算に合った範囲で楽しむ
 
経験者の方への提案
- 普段選ばない部位への挑戦
 - 同じ部位の異なる調理法の探求
 - 産地や生産者による味の違いの比較
 
和牛は日本が世界に誇る食文化の一つです。正しい知識を持って、その魅力を存分に楽しんでください。
あなたの和牛体験が、素晴らしい食の思い出になることを願っています。
【筆者プロフィール】 福永(株式会社牛道役員) 1級フードアナリスト/管理栄養士・栄養教諭 25年間の学校栄養教諭経験と和牛業界での実務経験を活かし、食材の特性を科学的・実用的な観点から分析。消費者目線での分かりやすい情報提供を心がけている。
  
  
  
  

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