「なんでこんなに脂がくどくないんだろう」と、初めて食べたお客様がつぶやく瞬間があります。霜降りを口にした直後の、あの一言。本店店長のマエは、そういうとき、静かに微笑みながらこう答えます。「それはたぶん、牧場から説明しないと伝わらないんです」と。
鹿児島の焼肉店は数え切れないほどあります。天文館だけを歩いても、のれんをくぐれば黒毛和牛を謳う店に事欠きません。では、なぜGyudo!のさつま福永牛は違うのか。その答えは厨房でも仕入れ帳でもなく、鹿児島県薩摩郡さつま町に広がる牧場にあります。
今回は、関東の大手スーパー精肉部での勤務経験を持ち、肉を「見る目」では社内随一と言われる本店店長マエに話を聞きました。寡黙で真剣、でも時折見せる茶目っ気のある笑顔が印象的な彼が、普段お客様に語るよりも少し深いところまで、生産現場の話を教えてくれました。
こんな方におすすめ
- ✅ 鹿児島の焼肉を食べに来たけれど、どの店が「本物か」を知りたい方
- ✅ さつま福永牛がなぜ美味しいのか、背景まで理解したい方
- ✅ 肉の脂が苦手で、霜降りを敬遠していた方
- ✅ 牧場直営という言葉の意味を、具体的に知りたい方
- ✅ 食べた後に誰かに語れる「理由のある美味しさ」を求めている方

精肉部出身の店長が、最初に驚いたこと
マエが関東のスーパーで精肉部に勤めていた頃、和牛は「等級」で語られるものでした。A5かA4か、BMS(牛脂肪交雑基準)の数字がいくつか。それが品質の共通言語でした。
鹿児島へUターンし、株式会社牛道に入社したとき、最初に渡されたのは等級表ではなく、牧場の説明でした。「繁殖から肥育まで自分たちでやっています。出荷したら精肉して、ここで焼いて出します」というオーナーの福永充の言葉。
「正直、ピンとこなかったんです最初は」とマエは言います。「スーパーにいたとき、牛の出どころを考えたことって、あまりなかった。等級を見て仕入れる、それだけでしたから」
考えが変わったのは、実際にさつま町の牧場を訪れたときのことでした。牛舎に入ると、流れていたのはジャズでした。
牧場でジャズが流れている理由
さつま福永牧場では、牛舎の中にスピーカーを設置し、ジャズやクラシック音楽を流しています。アニマルウェルフェア——動物福祉という考え方に基づいた取り組みです。ストレスの少ない環境で育った牛は、肉質が安定するという経験的な知見がその背景にあります。
さらに驚くのは飼料へのこだわりです。地元農家が育てたワラや牧草を中心に使い、肥育の後期には大豆や米ぬかなどを蒸して作る「炊き餌」を給餌します。市販の配合飼料を流し込むのではなく、手間をかけて素材を整える。その積み重ねが、脂質の性質として現れてきます。
さつま福永牛のMUFA(一価不飽和脂肪酸)値は平均62%。脂の融点は13℃です。和牛の平均的な融点が15〜20℃とされる中で、この数値は国内トップクラスです。口に入れた瞬間にすっと溶ける、あの感覚の正体がここにあります。
「脂が苦手なんですとおっしゃるお客様が、食べてみたら全然大丈夫だったっていうことが本当によくあるんです」とマエは言います。「霜降りに苦手意識がある方でも、融点が低い脂は胃への負担が少ない。食べ終わった後にもたれないというお声は、数値で説明できる話なんですよね」
✓ ここまでのポイント
- さつま福永牛の「くどくない霜降り」の理由は、飼育環境と飼料のこだわりにある
- MUFA値62%・脂の融点13℃という数値が、食後の軽さを科学的に裏付けている
- アニマルウェルフェアと循環型農業が、品質の安定を支えている
「一頭飼い→一頭売り」という思想
現在、さつま福永牧場では肥育牛約1,100頭・繁殖牛約450頭・子牛約300頭、合計約1,850頭を飼育し、年間約600頭を出荷しています。オーナーの福永充が祖父の代から引き継いだ家業を、約50頭から現在の規模に育て上げた。その歩みの中で生まれた哲学が「一頭飼い→一頭売り」という言葉に集約されています。
繁殖・肥育・加工・販売・飲食まで、すべてを自社で完結させる六次産業化。大手チェーンが規模で勝負するのとはまったく異なる発想です。「自分の牛が、どんな状態で、誰の口に届くかを最後まで見届けたい」という意志がなければ、成立しない仕組みです。
マエがGyudo!に惹かれた理由も、結局ここにあると言います。「スーパーでは、どこの牧場の肉かを気にする人はほとんどいなかった。でも、ここでは牧場の話が当たり前にできる。それが、肉の仕事をやってきた人間として、ちゃんと誠実だなと思ったんです」
オーナーの福永充は2013年に全国肉用牛枝肉共励会で名誉賞(最高賞)を受賞。そして2025年、全国肉事業枝肉共励会でグランドチャンピオンを獲得しています。受賞は計4回。「日本一」という称号は、自己申告ではなく、全国規模の審査による客観的な評価です。
「鹿児島で牛の畜産をやっている友人から紹介。都内でこれだけの肉なら2倍以上のお会計のはず。本当に連れてきてもらって良かった」
TripAdvisor・ご来店のお客様
ICTセンサーが牧場に革命をもたらした話
「牧場って、アナログなイメージがありますよね」とマエは少し笑いながら言います。「でも、さつま福永牧場は違うんです」
牛の首にはICTセンサー付きの首輪が装着されています。体調管理や発情・妊娠の検知をデータで把握する精密畜産の実践です。牛の体調の変化を見逃さず、適切なタイミングで対処することで、健康状態が安定し、A4等級以上の出荷率9割という水準を年間通して維持することができます。
また牛の排泄物は堆肥として地元農家に還元され、その農家が育てたワラが再び飼料として戻ってくる。循環型農業として地域全体が繋がっています。「その牛が食べたものが、その肉の味になる。そういう意味で、さつま福永牛は鹿児島の土地の味とも言えるかもしれない」とオーナーは語ったことがあると、マエは教えてくれました。
「鹿児島焼肉ランチNo.1。脂が苦手と伝えたら赤身セレクションに変えてくれた。¥2,000台でこのクオリティは驚き」
Retty・ご来店のお客様
「なぜうまいか」を語れる店でありたい
休日の朝、マエは愛犬を連れて近所の公園を散歩します。人混みを避けて歩きながら、前日のお客様の反応を思い返すこともある、と話してくれました。「脂がさっぱりしてた、という感想をいただいたとき、正直うれしいんですよ。それが数値として裏付けられているものだと知っているから」
精肉のプロとして関東で培った目と、鹿児島の牧場直営という現場で得た知識が、マエの中で一本の線になっています。お客様の前では多くを語らず、でも聞かれれば丁寧に、そして正確に答える。そのスタイルが、常連のお客様に支持されている理由のひとつです。
Gyudo!のランチは1,870円から始まります。「まず一度、食べてみてほしい」とマエは言います。「説明より先に、食べてもらった方が伝わることがある。でも、なぜこの脂がこの融点なのかを知った後に食べると、また少し違う味になると思うんです」
鹿児島の肉がうまい理由は、牧場にありました。その牧場の話を、店長自ら語れる店が天文館にあります。
まとめ:牧場の物語が、一枚の肉を特別にする
ジャズが流れる牛舎、炊き餌の手間、ICTセンサーによる精密な健康管理、そして循環型農業で地域と繋がる牧場——さつま福永牛の「うまさ」は、こうした積み重ねの先にあります。A4等級以上9割という安定した品質と、脂の融点13℃という数値は、偶然ではなく必然の結果です。
本店店長マエは今日もカウンターに立ち、一枚一枚の肉を真剣な眼差しで見ています。そして時折、茶目っ気のある笑顔で「牧場の話、しましょうか」と言います。
ぜひ一度、天文館のGyudo!で、その一枚を食べてみてください。スタッフがていねいにお迎えします。ご予約・お問い合わせはお気軽にどうぞ。
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