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鹿児島焼肉六次産業化とは何か。繁殖から飲食まで自社完結する牧場の話

「このお肉、どこで育ったんですか?」

はなれ店長のタイチは、カウンター越しにそう聞かれるたびに少し嬉しくなると言う。「鹿児島県さつま町の牧場です。うちのオーナーが一頭一頭育てた牛なんですよ」——その一言で、お客様の表情が変わる瞬間が好きだ、と。

洋食の世界から飛び込んだタイチが株式会社牛道に入って気づいたのは、「食材の背景が見える」という体験がいかに珍しいか、ということだった。シェフとして仕入れる食材には、たいてい産地の名前はあっても、誰が・どんな思想で・どのように育てたかまで辿れるものは少ない。でも、ここにいれば違う。牧場で何が起きているか、牛が何を食べているか、今年の出荷頭数がどのくらいかまで、話そうと思えば話せる。それが「六次産業化」という言葉の、実感を持った意味だった。

こんな方におすすめ

  • ✅ 六次産業化という言葉を聞いたことはあるが、具体的にどういうことか知りたい方
  • ✅ 焼肉店を選ぶ基準として「産地・生産者の透明性」を重視している方
  • ✅ 鹿児島の黒毛和牛がどのように育てられ、食卓に届くかに興味がある方
  • ✅ 接待や記念日の場で「なぜこの店を選んだか」を語れる理由を探している方
  • ✅ 牧場直営の焼肉店が通常の焼肉店と何が違うのかを知りたい方
鹿児島焼肉六次産業化とは何か。繁殖から飲食まで自社完結する牧場の話 | さつま福永牧場直営ギュウドウ 熟成焼肉 Gyu do!(ギュウドウ)本店 個室焼肉 牛道はなれ

六次産業化とは、「育てる・加工する・売る」を一本の線でつなぐこと

農業や畜産の世界で「六次産業化」という言葉が使われるようになって久しい。一次産業(農林水産業)が、二次産業(加工)と三次産業(販売・飲食)を組み合わせることで、1×2×3=6次産業——というのが語源だ。

ただ、言葉として知っているのと、実際にその仕組みが動いているのを見るのとでは、まったく別の話だ。

さつま福永牧場(鹿児島県薩摩郡さつま町)では現在、繁殖牛約450頭・肥育牛約1,100頭・子牛約300頭、合計約1,850頭を飼育し、年間約600頭を出荷している。オーナーの福永充が祖父から受け継いだ当初、牛の頭数は50頭ほどだった。そこから40年近い歳月をかけて積み上げてきた規模であり、その間に農協出荷から自主出荷へ、東京食肉市場への直接契約へ、そして直営飲食店の開業へと、一本の線がつながっていった。

繁殖・肥育・加工・精肉・販売・飲食——このすべてを自社でまわすとき、一頭の牛はどこで生まれ、どこで食べられるかが追跡できる。それが「牧場直営の焼肉店」ということの、本当の意味だ。

開店前の仕込み。タイチが毎朝確認するのは「今日の肉の顔」

はなれの開店は、ランチ営業のない夜専門(月〜土 17:30〜)だ。タイチの一日は、昼過ぎから動き始まる。

仕込みの中で最初にするのは、その日届いた肉の確認だ。牧場から直送されてくるさつま福永牛は、部位によって脂の入り方も色味も異なる。同じロースでも、個体差がある。洋食畑出身のタイチが入社後に最初に驚いたのは、「同じ部位でも毎回微妙に違う」という事実だった。スーパーや市場から仕入れる肉は均質化されていることが多いが、一頭飼いの牛からとる肉は、一頭ごとに個性がある。

「最初はそれが難しかったんですよ」とタイチは言う。「洋食だとソースや調理法でコントロールする部分が大きいので。でも今は、この個性を読んで、今日はどの部位をどのお客様に勧めるかを考えるのが面白くなりました」。

仕込みが終わると、個室の設えを確認する。はなれには完全個室(扉と壁で仕切られた本格的な個室)が複数あり、記念日や接待のお客様が多い。テーブルの花の向き、照明の色、椅子の位置——細部まで整えてから開店を迎える。これも、洋食レストランで身につけた習慣だという。

「さつま福永牛」の品質を語れるのは、牧場の話を知っているから

MUFA(一価不飽和脂肪酸)値平均62%、脂の融点13℃。数字だけ並べると専門的に聞こえるが、タイチがお客様に伝えるときはもっとシンプルだ。「霜降りなのに、食べたあとにもたれない。それがさつま福永牛の特徴です」。

脂の融点が13℃というのは、口に入れた瞬間にするりと溶ける温度帯だということ。和牛の平均が15〜20℃といわれるなかで、体温に近い温度でとけていく脂は、胃への負担が少ない。だから「霜降りは苦手」という方でも驚くほどすっきり食べられる。

この品質を安定させているのが、牧場でのICTセンサー管理だ。牛の首元につけたセンサーが体調・行動・妊娠の兆候をリアルタイムで把握し、A4等級以上の出荷率9割を維持している。飼料にも丁寧な手が入る——地元農家産のワラや牧草に加え、肥育後期には大豆や米ぬかを蒸してつくった「炊き餌」を与える。さらに、牛舎ではジャズやクラシック音楽が流れている。ストレスの少ない環境が肉質に直結するというアニマルウェルフェアの考えを、福永牧場は実践し続けている。

「これを全部話せるのが強みだと思っています」とタイチは言う。「お客様が『なんでこの肉が美味しいの?』と聞いてくれたとき、育て方から答えられる焼肉屋って、そんなに多くないと思うので」。

✓ ここまでのポイント

  • 六次産業化とは繁殖・肥育・加工・販売・飲食をすべて自社完結させること。さつま福永牧場はその全行程を実践している
  • さつま福永牛の品質(MUFA値62%・融点13℃)は、飼料・ICT管理・アニマルウェルフェアという牧場の積み重ねが生んでいる
  • 「なぜ美味しいか」を育て方から語れることが、牧場直営の焼肉店としての最大の強みになっている

受賞歴は「語れる理由」になる

2013年(平成25年)、さつま福永牛は全国肉用牛枝肉共励会で名誉賞(最高賞)を受賞した。さらに全国肉事業枝肉共励会ではグランドチャンピオンを4度獲得しており、最新の受賞は2025年だ。

これは単なる賞ではない。接待でこの店を選んだ担当者が「日本一を獲った牧場の直営店に連れてきた」と一言添えるだけで、テーブルの空気が変わる。記念日でここを予約した人が「今夜の肉、グランドチャンピオンの牧場から直送なんだよ」と話す。受賞歴は、選んだ理由を人に語れる根拠になる。

そして現在、さつま福永牛の販路はアジア・EU・アメリカへと広がりつつある。「鹿児島黒毛和牛」という括りではなく「さつま福永牛」というブランドで海外に出荷されている。一次産業がブランドを持つというのは、六次産業化の先にある景色だ。

「鹿児島で牛の畜産をやっている友人から紹介。都内でこれだけの肉なら2倍以上のお会計のはず。本当に連れてきてもらって良かった」

TripAdvisor 来店者レビューより

「焼きすき焼きは牛の旨味が凝縮した最高の一皿。シャトーブリアンはお口でとろける」

食べログ(牛道はなれ)来店者レビューより

夜の営業が終わったあと、タイチが思うこと

はなれの営業が終わり、個室を片づけながらタイチが振り返るのは「今日のお客様が喜んでくれたかどうか」だ。趣味は子育て、お気に入りの場所は海——仕事以外ではそういう顔を持つ彼が、この仕事に向き合う姿勢には、洋食時代に培ったサービスへの誠実さが滲んでいる。

「一頭を丸ごと使い切るって、簡単そうに聞こえるけど実はすごいことで。希少部位もロースもハラミも、全部に意味がある。それを余すことなくお客様に届けるのが、自分たちの仕事だと思っています」。

六次産業化という言葉は、外から眺めれば経営モデルの話に見える。でも内側から見ると、一頭の命を最後まで丁寧に価値にするという倫理の話でもある。牧場のジャズが流れる牛舎から、天文館の個室まで——その線は一本でつながっている。

まとめ:「育てた人の顔が見える」焼肉店が、鹿児島にある

繁殖から飲食まで自社完結するさつま福永牧場の六次産業化は、34年の業界経験を持つオーナー福永充が積み上げてきた一本の道筋だ。その先端に立つはなれ店長タイチは、毎日の仕込みと営業を通じて「なぜこの肉が美味しいか」を語れる人間であり続けることを自分の仕事と捉えている。

特別な夜の一席に、あるいは「本物の和牛」を体験したい一日に——育てた牛が届く焼肉店で、その答えを探してみてください。

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  • この記事を書いた人

gyudo-fukunaga

福永(株式会社牛道役員) 1級フードアナリスト・管理栄養士・日本箸教育講師・25年間の学校栄養教諭経験を経て、食品安全管理の知識と、現在の食肉業界での実務経験を活かし、消費者の皆様に安心・安全な食品選択のための情報を提供している。

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