先日、カウンター席でひとり焼肉を楽しまれていたお客様から、こんな質問をいただきました。「さつま福永牛って、脂の融点が13℃って書いてありますけど、それって何がすごいんですか?」
正直に言うと、牧場側の人間として「当たり前のこと」として日々接しているため、改めて聞かれると「どこから説明しようか」と少し考えてしまいました。でも、こういう素直な疑問がいちばん本質を突いています。数字だけが一人歩きしても意味がない。その日はカウンター越しに少し時間をいただいて、丁寧にお話しさせてもらいました。
この記事では、「脂の融点が低い」とはどういう意味なのか、そして「13℃」という数字が実際に食卓や口の中でどう体験されるのかを、比較を交えながらできるだけ平易に解説します。
こんな方におすすめ
- ✅ 「霜降り和牛は胃もたれする」と思ってあきらめていた方
- ✅ 脂の融点やMUFA値という言葉を見かけたが意味がわからない方
- ✅ 和牛選びの「本当の基準」を知りたい食通の方
- ✅ ギフトや贈答品に選ぶ和牛の品質を根拠をもって説明したい方
- ✅ 鹿児島の焼肉店・さつま福永牛に興味を持ち始めた方

「脂の融点」とは何か。バターと牛脂で考えてみる
融点とは、固体が液体に変わる温度のことです。わかりやすい例で言えば、バターは冷蔵庫から出してすぐは固く、しばらく室温に置くとやわらかくなり、フライパンに乗せれば溶けます。これは「バターの融点が室温付近にある」からです。
牛の脂にも同じことが言えます。脂の融点が高いと、口の中に入っても溶けにくく、冷えると固まります。豚の背脂やラードは常温でも固体に近い状態です。これは融点が高いためで、胃の中でも消化に時間がかかります。
では、牛の脂の融点はどのくらいが「普通」なのか。一般的な国産和牛の脂の融点は15〜20℃と言われています。国産和牛でも、品種・個体差・飼育環境によってこの数値は変わります。
さつま福永牛の脂の融点は、平均13℃。これは和牛として国内トップクラスの数値です。13℃というのは、冷たい水の温度よりわずかに高い程度。つまり、口に入った瞬間——体温37℃の口腔内では、ほぼ即座に溶け始める温度です。
融点が低いと、食卓でどう違うか。高融点の和牛との比較
ここで、融点の違いによる体験の差を具体的に比べてみます。
【融点が高い和牛(15〜20℃)の場合】
焼いた直後は確かにおいしい。ところが、少し冷めると脂が白く固まり始めます。口に入れても、脂がなめらかに溶けるまでに少し時間がかかり、食後に「胃が重い」と感じることがある。これは脂が体内で溶けにくい性質のため、消化に負荷がかかるからです。「霜降り和牛は量が食べられない」という感想の多くは、ここに原因があります。
【さつま福永牛(融点13℃)の場合】
口に入れた瞬間、脂がするりと溶けます。べたつかず、くどくなく、肉の旨味だけが口の中に広がる感覚です。お客様からよくいただく「霜降りなのに胃もたれしなかった」「さっぱりしているのに旨い」という言葉は、この融点の低さによるものです。冷めてもべとつきが少なく、時間をかけて会話しながら食べても品質が落ちにくい。
接待やはなれの個室ディナーでゆっくり召し上がるお客様に特にこの差を感じていただけるのは、そういう理由があります。
✓ ここまでのポイント
- 脂の融点とは「固体が溶け始める温度」のこと。一般的な和牛は15〜20℃、さつま福永牛は13℃
- 融点が低いほど口の中でなめらかに溶け、胃への負担も少なくなる傾向がある
- 「霜降りなのにさっぱり」「胃もたれしない」という体験の裏に、この数値がある
MUFA(一価不飽和脂肪酸)62%とはどういう意味か
融点と切り離せないのが、MUFA(ムファ)という数値です。MUFAとは「一価不飽和脂肪酸」の略で、オリーブオイルや魚の油に多く含まれる、体に優しいとされる脂肪酸の一種です。
一価不飽和脂肪酸は、融点を下げる方向に働きます。つまり、MUFA値が高い和牛ほど、脂の融点が低くなる傾向があります。さつま福永牛のMUFA値は平均62%。これは国内でも上位に位置する数値で、融点13℃と密接に関係しています。
比較として、一般的な黒毛和牛のMUFA値は50〜55%程度と言われています。7〜12ポイントの差は、実際の食感として体験できる差です。「なぜさつま福永牛はこんなに口当たりが軽いのか」という疑問への、科学的な答えがここにあります。
この数値は偶然ではありません。飼料の設計、飼育環境、飼育期間——それぞれのステージで意図的に積み上げてきた結果です。肥育後期には大豆・米ぬかなどを蒸してつくる「炊き餌」を給餌し、地元農家産のワラや牧草を中心に使用しています。牛舎ではジャズやクラシック音楽を流し、ストレスを最小限に抑える飼育環境を整えています。ICTセンサー付きの首輪で個体ごとの体調を管理し、A4等級以上を年間9割以上で安定的に維持しています。数字の裏に、これだけの積み重ねがあります。
「鹿児島で牛の畜産をやっている友人から紹介。都内でこれだけの肉なら2倍以上のお会計のはず。本当に連れてきてもらって良かった」
TripAdvisor(口コミより)
13℃という数字を、受賞歴が客観的に証明している
「自分で言っているだけでは?」と思われる方もいるかもしれません。そのご指摘はもっともです。だからこそ、第三者による評価が重要になります。
さつま福永牛は、2013年(平成25年)の全国肉用牛枝肉共励会において名誉賞(最高賞)を受賞しています。これは全国の和牛生産者が一堂に集まる最も権威ある大会で、品質・脂質・肉質を総合的に審査した上での最高評価です。さらに、全国肉事業枝肉共励会ではグランドチャンピオンを4回獲得(最新は2025年)しています。
脂の融点やMUFA値の良さは、こうした全国レベルの審査でも高く評価されます。「おいしい」という主観的な感想が、審査員の目という客観的なフィルターを通っている。それが受賞歴という形になっています。
接待でお連れするお客様に「なぜここを選んだか」を説明できる根拠として、「2025年日本一を獲った牧場の直営店」という事実は、語れる言葉になります。食材に背景があると、食事が会話になります。
「鹿児島焼肉ランチNo.1。脂が苦手と伝えたら赤身セレクションに変えてくれた。¥2,000台でこのクオリティは驚き」
Retty(口コミより)
どんな人に、どんな場面で「この脂質」が刺さるか
最後に、融点13℃・MUFA62%という特性が特に価値を持つ場面を整理します。
脂が苦手な方・胃への負担を気にする方
スタッフが「脂が苦手」と伝えてくれたお客様に赤身セレクションをご提案することも可能ですが、さつま福永牛の霜降り自体が「くどくない霜降り」です。「霜降りはちょっと…」という方にこそ、一度試していただきたい。
記念日・接待でゆっくり食事したい方
時間をかけて楽しむ食事では、冷めても脂がべとつかないことが大切です。はなれの個室でコースをゆっくり召し上がるとき、さつま福永牛の脂質特性は最も映えます。
通販・ギフトで贈る方
「届いたら胃もたれした」という和牛ギフトの失敗は、融点が高い脂質に起因することが多い。贈った相手に「さっぱりしていておいしかった」と言ってもらえる和牛を選ぶなら、MUFA値と融点を確認することが一つの基準になります。
高齢の方・食が細い方へのギフトとして
脂の消化負担が少ないという特性は、胃の弱い方・ご高齢の方へのギフトとしても安心材料になります。「本当においしいものを食べてほしい」という気持ちが、科学的な根拠とともに届きます。
まとめ:13℃という数字の意味は、食べた瞬間に体感できる
和牛の脂の融点が低いとはどういう意味か——一言で言えば、「口に入れた瞬間から溶け始め、くどさを残さない脂質」ということです。13℃という数字は、一般的な和牛の平均値(15〜20℃)と比べて明らかに低く、MUFA値62%という科学的な裏付けと、全国大会での受賞という客観的な証明を持っています。
牧場を始めて34年。一頭の牛を繁殖から育てて、加工して、提供するまでのすべてを自分たちで担っているからこそ、この数字に責任を持てます。食べた方に「霜降りなのにさっぱりしてた」と言っていただける瞬間が、牧場と店舗の両方を続けてきた理由です。
さつま福永牛を天文館で実際に味わってみたい方は、ぜひご予約の上お越しください。本店ではランチ1,870円から、ディナーはコース7,986円〜お楽しみいただけます。個室でゆっくりお召し上がりになりたい方は、牛道はなれをご検討ください。スタッフが部位や脂質の違いについても丁寧にご説明しますので、疑問があればお気軽にお声がけください。
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