蒸し穀物の甘い香りが、
牛舎の中に広がる。
これが、毎朝繰り返される
「炊いた餌」の時間だ。
「炊いた餌」——この言葉を初めて聞いたとき、どんな光景を想像しましたか。
大きな釜で穀物を蒸す。湯気が立つ。それを牛舎に運ぶ。文字にすれば簡単ですが、毎朝、何百頭分もの餌をこうして準備するのは、相当な手間です。それでも福永畜産がこれを続けているのは、理由があります。
「炊き餌」とは何か——生餌との違い
一般的な畜産では、乾燥した穀物(配合飼料)をそのまま与えることが多いです。それに対して、さつま福永牛の「炊き餌」は、穀物を蒸してから与えます。
乾燥穀物(生餌)
をそのまま与える
穀物を蒸してから
与える
穀物のデンプンは、生の状態では消化されにくいことがあります。蒸すことでデンプンが「糊化」し、消化酵素が働きやすくなります。牛にとっては、食べやすく、栄養を吸収しやすい状態になるわけです。
毎朝、何が起きているのか
「炊き餌」は、作るだけで終わりではありません。温度・量・タイミング——すべてを管理しながら、毎朝繰り返されます。
大量の穀物を蒸し器にかけます。蒸している間、牛舎の周囲に甘い香りが漂います。「この香りが来ると、牛たちが動き始める」とスタッフは言います。
蒸し加減は、その日の気温・湿度・穀物の状態によって微妙に変わります。均一に仕上がっているか、目と手で確認します。
2,000頭近い牛への給餌。量の調整も個体ごとに行います。「食欲が落ちた牛がいないか」「いつもと食べ方が違う牛がいないか」を、この時間に目で確かめます。
雨の日も、寒い朝も、年末年始も。牛は毎日食べるので、給餌は休めません。「この手間が、最終的に肉質に出る」——その信念が、毎朝を動かしています。
蒸し穀物の香りが漂い始めると、牛たちが向きを変えて飼料槽の方を見ます。「また来た」というように。毎朝同じリズムで繰り返されることで、牛に「安心のリズム」ができていくんだと思います。
逆に、食欲が落ちている牛がいれば、この時間にすぐわかります。炊き餌の時間は、給餌であると同時に「健康チェック」でもあります。データが拾えない、体の微妙な変化を、ここで見つけることがあります。
なぜ、これほどの手間をかけるのか
炊き餌は、乾燥飼料をそのまま与えるより、時間も人手もかかります。コスト面だけを考えれば、やめた方が効率的かもしれません。
それでも続けているのは、「牛の体に何が届くか」を最優先にしているからです。消化しやすい餌が、コンディションを安定させ、コンディションの安定が、肉質の安定に直結する——その因果関係を、長年の経験で確かめてきたからです。
大規模化・効率化が進む畜産業の中で、こうした「手間」を選び続けることは、経営判断としては簡単ではありません。でも、それが「さつま福永牛の肉質」を作っている要素のひとつだと、福永畜産は考えています。
炊き餌と、もうひとつの飼料——稲WCS
さつま福永牛が使う飼料には、炊き餌の穀物のほかに、「稲WCS(ホールクロップサイレージ)」があります。
稲WCSとは、稲を穂ごと刈り取り、発酵・保存した飼料です。さつま町の地元農家と連携して開発・調達しています。発酵によって栄養価が高まり、牛の腸内環境を整える効果があるとされています。
炊いた穀物と発酵稲飼料の組み合わせ——どちらも「牛の体の中で何が起きるか」を考えた選択です。見た目には地味な飼料の話ですが、この積み重ねがMUFA62%という数字の土台を作っています。
それが、食卓の「口溶け」になる。
炊き餌・稲WCS・ジャズ——
手間をかけた飼育環境が、MUFA62%・融点13℃という数字になります。
カット直後に瞬間冷凍。切りたての状態でお届けします。
さつま福永牛 公式オンラインショップ | satsuma-fukunaga.raku-uru.jp