春から夏にかけて、鹿児島は一年でもっとも空気が柔らかくなる季節を迎えます。天文館の通りを歩く人の足取りも、なんとなく軽やかに見えます。そんな時期になると、私たちのお店にも「久しぶりに特別なものを食べたくて」というお客様が増えてきます。
今日は、普段の接客ではなかなか話しきれないことを、少し率直に書かせていただこうと思います。タイトルにある「牛を育てた人間が焼き方まで責任を持つ」というのは、私たちが掲げているひとつの理念です。でも、それが実際にどういう意味を持っているのか、日々の仕事の中でどう形になっているのかは、あまり表に出る機会がありません。
今回はその「本音」を少しだけお伝えしたいと思います。
こんな方におすすめ
- ✅ 牛道はなれがなぜ「牧場直営」にこだわるのか知りたい方
- ✅ 焼肉店の「こだわり」が本物かどうか見極めたい方
- ✅ 接待や記念日の場で「この店を選んだ理由」を自信を持って語りたい方
- ✅ さつま福永牛の肉質や生産背景に興味がある方
- ✅ 食材の産地や作り手の顔が見える店を好む方

「育てた牛を出す」というのは、当たり前ではない
オーナーの福永は、鹿児島県薩摩郡さつま町で牧場を営んで34年になります。繁殖牛・肥育牛・子牛を合わせると約1,850頭を管理する規模です。祖父が1956年に1頭から始めた家業を、今日まで続けてきた。
「自分が大切に育てた牛を、食卓に届けるまで責任を持ちたい」という思いが、飲食店経営の出発点でした。これは聞こえのいい言葉ではなく、福永にとってはごく自然な感覚だったようです。農協への出荷から自主出荷契約を経て、飲食店という形に行き着いた。そのプロセス自体が、ひとつの答えでした。
牧場から精肉・加工・卸・販売、そして焼肉・すき焼き・しゃぶしゃぶ・ステーキという食べる場面まで、すべて自社で完結させる経営スタイルを「六次産業」と呼びます。言葉としては知られていますが、これを本当に一貫してやっている飲食店は、全国的にもほとんど存在しません。私たちがそれをできているのは、牧場が先にあったからです。お店のために牧場を作ったのではなく、牧場から必然的にお店が生まれた。その順番が、他の焼肉店との根本的な違いだと思っています。
牛舎にジャズが流れている理由
あまり知られていないことですが、福永畜産の牛舎ではジャズやクラシックが流れています。また、牛一頭ずつにセンサー付きの首輪を装着して、健康状態をリアルタイムで把握する仕組みも取り入れています。
これはアニマルウェルフェア(動物の福祉)という考え方に基づいた取り組みです。ストレスの少ない環境で育った牛は、肉質にも差が出やすいと言われています。ただ、私たちがこれをやっているのは、肉質のためだけではありません。育てることに対して誠実でありたい、というシンプルな動機がベースにあります。
飼料にも手間をかけています。地元農家が作る飼料、稲WCS(発酵粗飼料)、そして肥育後期には「炊き餌」と呼ばれる手間のかかる方法を採用しています。こうした積み重ねの結果として、さつま福永牛はMUFA(一価不飽和脂肪酸)の平均が62%、脂の融点は13℃という数値に達しています。一般的な和牛の脂の融点が15〜20℃とされる中、この低さが「口に入れた瞬間にさっと溶ける」「しつこくない」という食感につながっています。
数字だけ見ると難しく感じるかもしれませんが、お客様が「なんかこれ、くどくないね」とおっしゃるのは、この部分が理由のひとつです。
✓ ここまでのポイント
- 牧場から飲食店まで自社で完結するスタイルは、お店のために牧場を作ったのではなく、牧場が先にあったことで生まれた
- アニマルウェルフェアへの取り組みや飼料へのこだわりが、さつま福永牛の肉質を支えている
- 脂の融点13℃という数値が、食べたときの「くどくない」という感覚の背景にある
「焼き方まで責任を持つ」が意味すること
店長のタイチは、もともと洋食出身です。牛道に入社してから、肉のことを一から学び直しました。今では部位ごとの特性や、火の入れ方による変化を誰よりも細かく気にしています。料理の研究を続けながら、「どうすればこの肉のよさを最大限に引き出せるか」を常に考えている人間です。
私たちのお店では、焼肉コースに限らず、すき焼き・しゃぶしゃぶ・ステーキという形でも同じ牛肉を提供しています。これは「焼肉」という調理法だけが肉に合うわけではなく、部位や状態によってベストな食べ方が違うからです。A5等級のさつま福永牛であっても、部位によっては焼くより出汁に通したほうが旨さが出る。そういう判断ができるのは、育て方を知っているからでもあります。
お客様から「自分で焼くより、スタッフに焼いてもらうほうが好き」というお声をいただくことがあります。焼き加減の好みや、その日の肉の状態を見ながら、一番おいしいタイミングでお出しする。それが「焼き方まで責任を持つ」ということの、日常的な形です。
「自分で焼くのも楽しいけれど、ここではスタッフさんが全部見てくれるので、話に集中できてよかったです。肉もこんなに柔らかいものなんだと初めて知りました」
40代・男性(接待でご利用)※個人の感想であり、同じ体験をお約束するものではありません
受賞歴について、正直に話すと
福永畜産は、全国肉用牛枝肉共励会でグランドチャンピオンを4回受賞しています(2013・2019・2023・2025年)。この実績は、私たちが積極的に前面に出しているわけではありませんが、お客様から「この肉は本物ですか」という目で見ていただくとき、ひとつの客観的な答えになると思っています。
接待の場で「なぜこの店を選んだのか」を相手に説明するとき、「グランドチャンピオンを4回取っている牧場の直営店です」というのは、言葉として無理がない。自信を持って語れる根拠があるというのは、選ぶ方にとっても少し楽なのではないかと思います。
「東京出張のついでに鹿児島に来たのですが、こんなに品質の高いお肉をこの価格で食べられるとは思いませんでした。都内だったら2倍以上の値段だったはずです」
50代・男性(観光・出張でご利用)※個人の感想であり、同じ満足をお約束するものではありません
テレビ朝日やフジテレビ、日本テレビなど複数の全国メディアに取り上げていただいてきましたが、取材の内容はほぼすべて「肉」に関するものです。店の雰囲気や立地よりも、肉そのものが評価されてきた。それは私たちが一番大切にしてきた部分でもあります。
天文館で15年、変わらずやってきたこと
鹿児島市の天文館エリアで営業を始めて15年が経ちます。センテラス鹿児島や山形屋、マルヤガーデンズに囲まれた立地ですが、正直なところ「知らないと通り過ぎやすい」場所にあります。派手な看板や行列を作るタイプのお店ではありません。
それでも続けてこられたのは、接待や記念日にお越しくださるお客様が、また来てくださるからだと思っています。個室のある静かな空間で、良い肉を、丁寧な状態でお出しする。それだけのことを、ぶれずにやってきました。
酒は薩摩切子のグラスを複数揃えていて、お好みで選んでいただけます。こういった細かいことも、「ここに来る理由」のひとつになってくれていたらと思っています。
まとめ:「本音」を一言で言うなら
牛道はなれがこだわっていることは、突き詰めるとシンプルです。自分たちが育てた牛を、食べていただく瞬間まで、誠実に扱い続けること。それだけです。
誇大な表現を使いたいとは思いません。でも、牧場から食卓までのすべてに責任を持とうとしている飲食店は、そう多くないと思います。それが私たちの「本音」です。
接待・記念日・鹿児島への旅の特別な一食として、牛道はなれを候補に入れていただけましたら嬉しいです。ご不明な点やご要望は、お気軽にお問い合わせください。コースの内容や個室のご案内など、丁寧にお答えします。


コメント