牛肉の旨みは、焼き方よりも前に決まっています。
少し意外に聞こえるかもしれませんが、私たちが長年牧場に向き合ってきて、それが実感です。どれだけ丁寧に火を入れても、素材の段階で積み上げてきたものは変えられません。では、その「素材の段階」で何が起きているかというと——飼料、なんです。
牛が毎日何を食べて育つか。それが脂の質にも、肉の甘みにも、食べたあとの余韻にも、ちゃんとにじみ出てくる。そのことを、今日は少し詳しくお話しさせてください。普段はなかなかメニューには書けない、牧場の裏側の話です。
こんな方におすすめ
- ✅ さつま福永牛がなぜ美味しいのか、その理由を知りたい方
- ✅ 牧場直営の焼肉店が「何を大切にしているか」に興味がある方
- ✅ 接待や記念日に「語れるストーリーのある肉」を選びたい方
- ✅ 食材の産地や育て方にこだわりを持つ方
- ✅ 鹿児島・天文館で本格的な和牛を楽しみたい方

稲WCSとは何か——牧場で「飼料を育てる」という選択
稲WCS(ホールクロップサイレージ)という言葉を聞いたことがある方は、そう多くないかもしれません。簡単に言うと、稲を実が熟す前に刈り取り、茎・葉・穂をまるごと発酵・保存した飼料のことです。
一般的な肥育農家では、輸入トウモロコシを主体とした配合飼料を使うケースが多いのですが、オーナーの福永は早い段階からこの稲WCSに注目してきました。鹿児島県薩摩郡さつま町の地元農家と連携し、国産の稲を使った飼料を牛に与える。地域の農業との循環が生まれるだけでなく、牛の腸内環境が整い、肉質にも影響が出てくるんです。
「地元の土で育った稲を、地元の牛が食べる」——この流れをつくるために、農家さんとの関係をずっと大切にしてきました。飼料の話になると、福永はいつになく饒舌になります。それだけ、長年向き合ってきたテーマだということでしょう。
「炊き餌」——肥育後期だけに許される、特別な手間
もう一つ、さつま福永牛の飼料で欠かせない話が「炊き餌」です。
炊き餌とは、肥育の後期——出荷が近づいた時期に限って与える、加熱・調理した飼料のことです。消化吸収を高め、霜降りの入り方をより丁寧にコントロールするための手法で、手間とコストがかかるぶん、多くの牧場では省かれてしまいます。
実際、繁殖・肥育・加工・精肉・飲食まで自社で完結している牧場だからこそ、「最後の仕上げ」にここまでこだわれる。出荷先が自分たちの店であれば、妥協する理由がないんです。
よく「なぜそこまでするんですか」と聞かれます。答えはシンプルで、「お客様が食べるところまで、責任を持ちたいから」。牧場経営34年、その言葉の重みは、年を重ねるほど増しています。
✓ ここまでのポイント
- さつま福永牛の旨みの背景には、地元農家と連携した稲WCS(国産飼料)の活用がある
- 肥育後期の「炊き餌」は手間とコストがかかるが、霜降りの質を高めるために続けている
- 「食べるところまで責任を持つ」という考え方が、飼料選びの根底にある
脂の融点が低い理由——数字に現れる飼料の成果
こうした飼料へのこだわりは、数字にも現れています。さつま福永牛の脂の融点は約13℃。一般的な和牛の平均が15〜20℃と言われる中で、これは注目に値する数値です。
融点が低いということは、口に入れた瞬間に脂がほどけやすいということ。くどさが少なく、もたれにくい食後感につながります。また、MUFA(一価不飽和脂肪酸)の平均が62%という数値も、丁寧な肥育の積み重ねによるものです。
「脂が多いから旨い」ではなく、「脂の質が旨みを決める」——この考え方が、飼料選びから焼き方まで、一貫して流れています。
店長のタイチは洋食出身で、入社後に肉の世界を一から学んだ人間です。「福永牛の脂は、火を入れると香りが変わる瞬間がある」と話してくれたことがあります。飼料に由来するその香りを引き出す焼き方を、今も研究し続けています。
牧場の「見えない仕事」が、食卓の味をつくっている
牛舎にはジャズやクラシックが流れています。センサー付きの首輪で健康状態を毎日確認し、ストレスを最小限にする環境づくりにも力を入れています。こうしたアニマルウェルフェアへの取り組みも、飼料と同じく「見えないところ」の積み重ねです。
平成25年(2013年)の全国肉用牛枝肉共励会での名誉賞受賞をはじめ、グランドチャンピオンを4回(2013・2019・2023・2025年)受賞してきた実績は、こうした日々の仕事の結果として積み上がったものです。
受賞そのものが目的ではありません。でも、客観的な評価は、私たちが正しい方向を向いているかどうかの確認になります。そして、お客様がお店で「なぜこの肉はこんなに美味しいんだろう」と感じてくださる瞬間——それが、一番のフィードバックだと思っています。
「部位ごとに違う味わいを少しずつ楽しめて、最後まで飽きませんでした。脂っぽくなくて、いくらでも食べられる感じが不思議で。」
(30代・女性/記念日ご利用のお客様。個人の感想であり、同じご満足をお約束するものではありません)
「都内でこのクオリティだったら、2倍以上払っていたと思います。こういう牛肉に出会えたことが、鹿児島に来て一番の収穫でした。」
(40代・男性/出張でご来店のお客様。個人の感想であり、同じご満足をお約束するものではありません)
まとめ——飼料の話をメニューに書けない理由と、書きたい気持ち
稲WCSや炊き餌の話は、メニューには書ききれません。「詳しすぎる」と言われることもありますし、数ページになってしまいます。でも、知っていただけると、一口目の味わいが少し変わるかもしれない——そう思って、こうした場所でお伝えするようにしています。
個室でゆっくりとお食事をされる中で、「この肉はどうやって育てているんですか」と聞いていただけることがあります。そういうとき、スタッフ一同が少し嬉しそうになるのは、自分たちが誇りを持って提供しているものを、ちゃんと受け取っていただいた気がするからです。
天文館の個室焼肉「牛道はなれ」では、さつま福永牛を使ったコース料理をご用意しております。接待や記念日のご利用はもちろん、「一度ちゃんとした鹿児島の和牛を食べてみたい」という方にも、ぜひ足を運んでいただけたら嬉しいです。
ご予約やご相談は、お電話またはオンラインから承っております。お気軽にどうぞ。


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